神社本庁には「神職になるにはどのような方法があるのですか」という問合せが数多く寄せられます。神道を信仰しているから、神社に務めたいと思っているから、など、その理由はさまざまでしょう。では「神道」とは何ですか?「神職」とはどういう仕事をする人ですか?と聞かれたら、あなたはどう答えますか。このページでは、主に神職と階位について簡単な説明を記しています。

アエノコト:奥能登の農家で行われる田の神祭り
  「神道」とは、我国に仏教が伝わる以前から日本人が持っていた、自然のちから、生命力に対する崇拝の念や畏怖の念、それに基づく生活上の慣習などが、永い歳月の中で神事を通じて体系化されたものということができます。神道の歴史を見てみると、仏教や儒教等が伝えられた後は、それらの影響を受け、あるいは調和を図りながら推移してきたことがわかります。しかし、山川草木にも神様がおられる、それゆえ自分たちが生きているのだという基本的な考えは変わることなく、自然と共生してきた日本人の心の中に、今も脈々と受け継がれています。
  また、神道の特徴の一つに「禊(みそぎ)と祓(はらへ)」(水につかさどるなど身体を祓い清めること)があります。これは神を祀る者や場所は、常に清浄を保たねばならないとの考えに基づくものです。
  禊と祓によって心身の穢れを取りはらい、神を祀る場所の清浄に努めなければならないのです。


奈良県 大神神社
  神社とは、簡単に説明しますと、神様がお鎮まりになり(お住まいになり)、祭祀(お祭り)を執り行う場所といえます。
  神社の建物としては、神様が鎮まるための本殿と、祭祀を行い参拝者がお参りするための拝殿等に分かれます。、また神社の入口や境内には鳥居を建てるのが通常です。神社によっては、その他の建物や石造物(灯篭、狛犬など)を設けています。それらの建物等と荘厳さを保つための森等によって広い意味での神社が形づくられています。
  尚、山などの自然を神様のおられる場所、神様が降臨される聖地として拝し、本殿を設けない神社もあります。

熱田神宮歳旦祭
  一般には「神主さん」「祢宜さん」などとも呼ばれますが、神社本庁では「神職」という名称を使います。
  神職とは、斎戒(心身を清浄にすること)を旨として、神社に奉仕し、神事を行う人をいいます。神職の最大の任務は、祭祀を厳修する(正しく厳かに行う)ことです。そのために、神社の管理を日々、確実に行わなければなりません。常に、本殿を始め諸建物、境内地を清浄に保つことが祭祀を行う第一歩です。また、神様の御神徳を多くの人にお頒ちするために教化活動を行ったり、法規に基づいた神社のお運営を行っています。それらの職務を円滑に進めるため、神社には宮司、祢宜、権祢宜などの職を設けています。
  神社本庁においては、階位(神社本庁が授与している神職資格)を所持し、なおかつ権祢宜以上の職にある者を「神職」と定義しています。

神社本庁庁舎
  神社本庁は、伊勢の神宮を本宗(根本の尊貴な神社として尊崇すること)と仰ぐ、全国約8万の神社を包括する宗教法人で、事務所は東京都渋谷区代々木にあります。昭和21年2月3日に設立され、包括下の神社の管理・指導を中心に、日本の伝統の護持に努めています。
  また、神社本庁の地方機関として各都道府県に「神社庁」が置かれています。神社庁は、各都道府県内の神社を管轄し、神社本庁からの指導を神社に伝える役割等を持ちます。

 神職になるための資格を「階位(かいい)」と言います。階位には五段階あり、上から浄階(じょうかい)、明階(めいかい)、正階(せいかい)、権正階(ごんせいかい)、直階(ちょっかい)となっています。階位を取得するには、まず、神職としての学識を神社本庁から認定されてなければなりません。学識認定は「階位検定合格証」によって認定されます。

 階位検定に合格するには
   1.直 階・・・神職育成機関普通課程予科、神職養成通信教育、階位検定講習会のいずれか
   2.権正階・・・神職育成機関普通課程、神職養成通信教育、階位検定講習会、階位検定試験のいずれか
   3.正 階・・・神職育成機関普通課程、階位検定講習会、階位検定試験のいずれか
   4.明 階・・・神職育成機関高等課程、同専攻課程・同明階総合課程・同専修課程、階位検定試験のいずれか
 の課程を履修修了し、神社庁を経由して神社本庁に「階位検定願」を提出しなければなりません。その上で必要な神務実習を
修了の後、再度神社庁を経由して神社本庁に「階位授与願」を提出します。本庁よりその検定合格に見合った「階位証」が授与
されます。
  尚、浄階については、現に神職である者に対し、その在職年数、功績等を勘案して与えられますので、通常の方法では取得
できません。

 神職を志す者のために神道に関する教育を行い、神社神道に対する信仰と神社奉仕の精神を養うための教育機関です。在学中に所定の学科目の単位を修得し、神社での実習を修了すれば、卒業時に神職資格(階位)が授与されます。大学を含め全国に七つの養成機関があり、それぞれの養成課程を設置しています。

養成課程には、
○予     科
(中学校卒業対象、1年課程。修了時に直階が授与されます。)
○普通課程 I 類
(高等学校卒業者対象、1年課程。修了時に権正階が授与されます。)
○普通課程II類
(高等学校卒業者対象、2年課程。修了時に正階が授与されます。)
○専 修 課 程
(普通課程U類修了、正階所有、短期大学卒業のいずれかに該当する者対象、2年課程。
 修了時に明階検定合格となり正階が授与されます。)
○高 等 課 程
(高等学校卒業者対象、4年課程、大学学部に設置。卒業時に明階検定合格となり正階が授与されます。)
○専攻課程 I 類
(大学卒業者対象、1年課程。大学の神道学専攻科に設置。修了時に明階検定合格となり正階が授与されます。)
○専攻課程II類
(大学卒業者対象、2年課程。大学院に設置。修了時に明階が授与されます。)
○明      
(國學院大學・皇學院大学の高等課程4年在籍者及び既に神職課程を修了した者が対象、6ヶ月課程。
 國學院大學皇學院大学に設置。卒業時に明階が授与されます。)
以上の8課程があります。

  神職と階位について説明しましょう。
  まず、神職の職名は上から「宮司」「権宮司」「祢宜」「権祢宜」「出仕」等があります。
  但し、「権宮司」は、別表神社(その由緒や規模、活動状況等を鑑み、規則の別表に掲げる神社)のうち、承認を受けた神社にのみ置くことができます。「出仕」は、いわば見習い期間の名称で正式神職とはみなしていません。また定員は、宮司1名、(権宮司1名)、祢宜1名、権祢宜若干名と定められていますが、神社の規則によって増員しているところもあります。
  次に階位との関係ですが、基本的には階位を持っていれば禰宜、権禰宜として任用され、権正階以上の階位を持っていれば宮司になれます。別表神社においては、「宮司」「権宮司」は明階以上、「禰宜」は正階以上、「権禰宜」は権正階以上とされています。
  在籍年数等によって、出仕から権禰宜へ、権禰宜かた禰宜へというように昇進していきます。
宮司(ぐうじ) 基本的に階位を持っていれば禰宜、権禰宜として任用され、
権正階以上の階位を持っていれば宮司になれます。(但し別表神社は明階以上)
権宮司(ごんぐうじ) 権宮司は、承認を受けた神社にのみ置くことができます。(但し別表神社は明階以上)
禰 宜(ねぎ) 正階位以上
権禰宜(ごんねぎ) 権正階位以上
出 仕(しゅっし) いわば見習い期間の名称。正式な神職にはみなされません。

在職年数等によって、出仕から権禰宜へ、権禰宜から禰宜へと昇進していきます。
(神社本庁「階位取得のてびき」より抜粋)